生きてくだけで息も絶え絶え

人並みの生活って大変だ

雨雲の夢

 時々ひどく、自分が人間であることに嫌悪することがある。仲がよかったはずの友を煩わしく感じたとき、昔付き合っていた人を思い出したとき、原因不明の体調不良が不意にやってきたとき、友の努力を妬ましく感じたとき。あげればキリはないけれど、様々な小さなことの全ては何かとても大きなものの一部で、そのかけらを覗いてしまったような恐怖が、不安と一緒になって押し寄せる。そこに悪い夢が重なると、責め立てられているような感覚になる。もう全部自分のせいで良いから、許してくれなくていいから、どうか静かに眠ることだけは認めて欲しいと願う。

 

 最初はただの、雨を恐れる夢だった。遠目からでも雨粒が判るような大きな雨雲が迫るのを見ながら、屋外に干していた自分のパーカーが濡れてしまうからとあわてて外していた。うまく外れずにモタモタしているうちに雨雲はそこまで来ていて、何とか救出したパーカーを抱いて走り出す。よく知った近所の公園を左手に見ながら直進し、実家に帰るように2つめの交差点を右折する。追いつかれる、と振り返った先には、暗い雨雲がこちらを見下ろしながら大きく口を開けていた。左には煩わしさを感じている友人が少し前を走っていて、右では女の子と祖母と思しき女性が少し後ろからついてきていた。女の子がこちらの右手を掴み「前に大丈夫だったのやってみていい?」と訊く。頷くと、彼女は手を繋いだまま地面に膝をつき、身を屈めて丸まった。同じように友人の手を掴んで体を小さくすると、女の子は掴んだ手に口をくっつけて軽く息を吐いた。それも同様に真似すると、ひやりとした感覚が背中を撫でて消えた。女の子が「大丈夫だった」と言って体を起こした気配がしたので倣うと、祖母と思しき女性は下半身だけを残して消えていた。

 目が覚めて感じたのは全身の冷えと痛みだった。真冬に感じる、足首の先が冷たさでちぎれそうになるような。